高温化と土砂降りの中で・・・「2023年5月」

さいたま市の2023年5月の最高気温積算値は685℃。1980年以来44年間で第9位です。
この数字だけからすると、比較的暖かい5月だったとまとめることもできそうです。しかし、細かく見ていくとちょっと違った事が言えそうです。

雨については、総降雨量は98.5mm、1980年以来44年間で少ない方から数えて第25位と、中ぐらいの順位でした。

5月の月間降水量ととしてはごく「普通」の値です。

日降雨量レベル別の降水日数の割合を見ると、
日降雨量1mmの日の出現頻度は、平年は全体の4.9%に対し、2023年3.2%でした。
日降雨量2-3mmの日は、平年は5.1%の出現頻度に対し、 2023年0.0%でした。

3mmより少ない降雨量の日の割合は平年より少なかったと言えます。

他方、日降雨量4-10mmの日の出現頻度は、平年10.4 % に対し2023年19.4%と約2倍になっています。

日降雨量11-20mmの日の出現頻度は平年6.7%に対し2023年9.7%と約1.5倍です。

「降れば土砂降り」と言うのが2023年5月だったと言えるかもしれません。

ゴールデンウィークも2023年は例年ほど爽やかな天候ではなく、雨や曇の日が多かったように思います。

11月からの日最高気温の旬間平均値の五年間移動平均を1980年代から追いかけてみると、以下のようになります。

◆11月:

 上旬15℃以上の水準 1980年代に比べ2020年代は1-2℃高め
 中旬 10℃-13℃ぐらいの水準、1980年代に比べ2-3℃高め
 下旬 10℃以下の水準 1980年代より2-3℃高め

◆12月 

 上旬 10-12℃の水準 1980年代に比べ高いとは言えない
 中下旬 5℃近辺の水準 1980年代より1-2℃高め

◆1月

 上旬8-10℃以上の水準 1980年代より2-3℃高め

 中下旬:2-4℃程度の水準 1980年代より1-3℃高め

◆2月 

 上旬 2-4℃の水準 1980年代より3℃高め
 中旬 4-6℃の水準 1980年代より3℃高め
 下旬 4-8℃の水準 1980年代より4℃以上高め

◆3月

 上旬 1980年代10℃程度の水準、2020年代14℃近辺からそれ以上の水準で1980年代より4℃高め
 中旬 6-8℃の水準⇒10℃以上の水準 1980年代に比べ2020年代は2-4℃高め
 下旬 1980年代8℃程度の水準、2020年代は10-12℃以上の水準で2-4℃高め

◆4月

 上旬 1980年代は12℃を下回る水準、2020年代は12℃を上回る水準で1-2℃高め
 中旬 1980年代は12-13℃の水準で2020年代は14℃以上の水準と1℃程度高め
 下旬 1980年代は14-15℃の水準、2020年代は16℃程度の水準で1-2℃高め
 なお、中・下旬は年による変動が大きく、年を追うごとに一様に増加している傾向だとは言えません。

◆5月

 上旬は必ずしも1980年代より高いとは言えない
 中旬 1980年代は16℃程度の水準、2020年代は19℃程度の水準で3℃高め
 下旬 1980年代は19℃程度の水準、2020年代は21-22℃ 程度の水準で2-3℃高め

以上をまとめてみると、

 ・11月~5月まで全体としては2020年代は1980年代より高温化している
 ・年による変動はありますが、寒候期の方が1980年代から2020年代にかけて比較的一様に上昇している
 (暖候期の方が年による変動が大きい)
 ・各月とも上旬より中旬、中旬より下旬が気温レベルが高くなっているわけではなく、「寒の戻り」のような事を繰り返しながら、冬から春・夏に向かっている

 ・寒候期よりも3-4月の「春」になってからの方が1980年代よりも2020年代の最高気温水準が高めになっている。
 (4月下旬~5月は3月-4月中旬より水準が低めになっている)

と言った事が言えると思います。

この動きを地球環境の「恒常性」維持と雨や海の働きと言う点から考えてみたいと思います。

水の飽和水蒸気圧は、10℃上がるごとに約2倍になると言われています。(厳密に2倍ではありませんが・・・)

飽和水蒸気圧が大きいほど、水は蒸発しやすいと言えます。
0℃付近では、そもそも、水が凍っている事があり、あまり水は蒸発しません。
気温と飽和水蒸気圧の関係図は、10-20℃あたりから急速に立ち上がってきます。つまり、このへんから水分の蒸発が活発になってくると考えられます。
水は、100℃で沸騰します。100℃に近づけば蒸発が多くなり、水が液体の「水」として存在しずらくなります。

ですから、海が「海=液体としての水のまとまり」として存在するためには、海水温が一定の半位に保たれていることが必要です。

ところで、海水温は上昇すると水分の蒸発が多くなり、結果として雨も多くなります。
その結果、温度が下がり、海に液体としての「水」が戻ってきます。
こうして、地球環境は、一定の気温・水温の範囲の中で「恒常性」が保たれているわけです。


内陸部にあるさいたま市の気温レベルと海水温レベルが直接相関するわけではありません。

ただ、さいたま市で暖候期の方が寒候期の方が、1980年代に比べて2020年代の気温水準の開きが小さくなる、つまり、最高気温水準が15℃を上回るようになると気温水準の開きが小さくなるのは確かなようです。


やや強引な言い方をすると、
さいたま市近辺で気温水準が15℃を超えだした頃から日本近海の海水温レベルも上がっていて、飽和水蒸気圧も高まり、水の蒸散が起きやすくなっている、

(その分、雨も降りやすくなっている)と言うことぐらいは言ってよいかもしれません。

そして、最高気温水準が20℃を超え25℃に近づいてくると、それに応じて日本近海の海水温もやはり上昇しているとすると、それだけ雨が降りやすくなり、気温が下がる方向に作用するのかもしれません。

かくして、2020年代の初夏は、「高温化」しつつ、それに応じて雨(土砂降り)の頻度が高まり、気温上昇に「歯止め」をかけながら夏に向かうような変化をしていると考える事ができるかもしれません。

地域的にみると、「集中豪雨」のような事が起きやすく、災害に結びつきやすいので好ましくないのですが・・・

こうした「高温化」状態のまま、いわゆる梅雨時や真夏を迎えるとどうなるのか?

引き続き考察を進めたいと思います。

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