3)小資本で「自己雇用」を生み出す

もともと、農業はお金があまりかからない仕事です。
農家の経営を分析してみると、肥料や資材代などの「直接生産費」は5%程度で、お金がかかっているのは、トラクターや大規模ハウスなどの「減価償却費」、流通に乗せるための「出荷手数料」などである場合が多いのです。
ですから、自分で野菜を販売したり、農業体験の企画をしたりしている分には、あまり経費はかかりません。
3メートル四方程度で暖房設備を入れないミニ・ビニールハウスなら、10万~20万円程度で手作り可能で、燃料代もかかりません。この程度のものでも、冬場に出来るお野菜の幅がぐっと広がるので、直売や農業体験をやる上でも役立ちます。
また、家賃や光熱費のように売上がない時でも支払なければならない「固定費」がほとんどかからないのも菜園起業の特色です。
事業の経費には、この「固定費」と仕入れ代のように売上に応じて発生する「変動費」がありますが、
起業が失敗するのは「固定費」が原因の事が多いのです。お客さんがついて軌道に乗るまでの間も事務所やお店の維持に出費を強いられるため、経営が安定する前に挫折してしまうからです。
農地の賃料は1000平米あたりで1~3万円程度のことも多く、遊休農地として持て余している場合には「使用貸借」と言ってタダで使うことが認められる場合もあります。
このように、菜園起業は、少ない資金で始めることが可能です。
始めた後で、お客さんの反応を見ながら安定的な経営方法を考えていけば、徐々に、「自分で自分の雇用を作る」方法を見出していく事が出来るようになるでしょう。


 

上の例は、あるハウス作野菜農家の経営状況です。

3,000万円近い売上に対し、農薬や肥料などの生産費は約600万円で、20%程度です。

ビニールハウスやトラクターなどの設備投資費が売上の約10%程度、出荷のための手数料などが約3分の1程度の額になっています。

こうした経費を差し引いて、1,000万円以上の所得を達成していますが、家族3人で労働しているので、一人あたりの年収は約300万円。

決して、高収入とは言えないでしょう。設備投資をして行う農業にはハイリスクがつきまとう一方、必ずしもハイリターンが得られるとは限らないのです。


固定費、変動費については、このセミナーの「経営の方法も覚えておこう」で、改めて学習します。

標準的な解説はこちら>>

使用賃借 お金を払って借りる賃借に対して、無償で借りることを使用賃借と言います。

解説記事はこちら>>

インフォーマルセクター 企業や行政などによる雇用ではなく、小規模な自営業で自分自身と家族及び少数の使用人を雇用するような状態を言います。途上国では、企業セクターや公的セクターと並ぶ、もしくはそれ以上の雇用開発効果があると言われています。(路上の屋台、物売りなどがインフォーマルセクターに含まれます。)

★「インフォーマルセクター」が登場する古典落語の例:たらちね

 

 

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