実際の農作業は、基本操作とシーズン技術の適用が複合したものではないだろうか

「年間実習方式」は「種まき」なら「種まき」と言う基本操作の
反復学習になっていないのではないか

と言うお話をずっとしてきました。

ここで、ちょっと、現実の農作業はどうなっているかを
考えてみたいと思います。

例えば、実際に埼玉県南部で2月にニンジンの種まきをする場合、
どういう風にするでしょうか?

ほとんどの場合、以下のような経過をたどるでしょう。
1)地面に肥料や堆肥を撒いてから地面にすき込む
2)地面から土を盛り上げて「畝(野菜を植えるために帯状に土を盛り上げた場所)」を作る
3)畝にマルチ(保温用のポリシート)を張る。
4)マルチの穴にクボミをつける
5)クボミの中にニンジンの種を数粒入れる
6)クボミに土を入れ、種が隠れるようにする
7)畝の上部に半円形の支柱を立てて、不織布や農ポリ等の「保温資材」を張る

このうち、1)、2)、4)、5)、6)は、ニンジンでもホウレンソウでもサニーレタスでも、
ほぼ同様の操作で「種まき」を行うと思います。

ただ、ホウレンソウの場合、特に土が酸性になっていると育ちにくいので、
1)の肥料・堆肥のすき込み作業で消石灰等の中和資材を散布してすき込む必要があるかもしれないなど、
野菜の種類によって、多少、作業の方法に違いが出てきます。

3)と7)は、「2月に埼玉県南部でニンジンの種をまく」からこそ必要になってくる作業です。
埼玉県南部でも6月まきだったら、マルチや不織布で保温する必要はありません。
2月でももっと温暖な地方だったら、やはり保温資材を使う必要はないでしょう。

つまり、マルチや不織布のような保温資材の使用は、「種まき」と言う基本操作に
常について回るものではなく、地域や季節によって異なるものだと言えます。

その上でマルチならマルチを張ると言う農作業について考えてみると、
「マルチを張る」作業それ自体は、「種をまく」と言うのと同じ一種の基本操作です。

ただ、「まだ寒いから発芽を促進するために、マルチを張った方がよいだろう」と言うのは、
「判断」が入り込んでいます。

つまり、2月まきニンジンの種まき時にマルチを張ると言う行為は、
「基本操作」と「判断業務」の両方が複合しているわけです。

こうやって考えてみると、2月にニンジンに種をまく一連の農作業は、
複数の「基本操作」と「判断業務」が複合した形になっている事が分かります。

そして、「年間実習方式」と言うのは、全く土に触れた事がない初心者の人に
こうした複数の基本操作と判断業務が複合している農作業をいきなり体験させる
一種の「OJT」の形式になっているのです。

一般論ですが、その分野の仕事を全くした事がない未経験者・初心者の人に
たとえ、座学をある程度施したにせよ、
複数の単純作業と判断業務が複合している業務のOJTをいきなりさせて
仕事を覚えられるかと言うと、

あまり覚えられないのではないかと思います。

そんな事はない。いきなりOJT方式で自分の職場は回っていると言う反論も
あるかもしれません。
しかし、それでうまく言っているように見えるのは、
その職場の業務をこなす限りにおいては、
当初は多少失敗しても、「やりながら覚える」やり方で、
なんとかなる状態にあるからです。

農業実習の場合、実習後は、実習地とは全く条件の違う場所で
野菜栽培に取り組まなければならない事が想定されます。

これは、研修時とは環境の異なる様々な職場で働くようなものです。

「いきなりOJT」型になってしまっている「年間実習」を
当初から受講させられると言うのは、

「教わる側」から見ると「覚えにくい」学習方法なのではないかと思うのです。

自動車教習方式・2日間で基本技術を学ぶ。半農予備校・菜園起業大学「基礎講習」
第一回株主総会討議資料「なぜ基礎講習なのか」

Follow me!