肥料のまき方の伝え方>障がい者が出来る野菜栽培マニュアルづくり

サラリーマンだった人が親の跡をついで農家になろうとした時、栽培法を「説明」されても分からなかったと言う話を聞いた事があります。

肥料の種類について、「そんなもん、カセイくれとけばいいだべ」って親御さんは仰られたそうです。

「カセイ」は化成肥料の意味ですが、今まで農業をしてこなかった人には理解出来なかった言葉でした。

その次に、化成肥料をどのくらい与えればいいか?と聞いたら、「そんなもん、ひとつかみに決まっている」と言われたとか。

ひとつかみってどのくらいなんだろう?と思ったそうです。

肥料の「量」は農家どうしでも誤解を生みやすい事があります。

僕の野菜づくりの師匠が有機肥料を使っているのをみて、ご近所の農家の方が興味を持ち、俺もやってみたい、どのくらいやればいいんだ?と聞いてきました。

師匠が教えてあげた後、しばらくしてからその人の畑に行くと、もうもうと湯気が立っています。

師匠が畑全体にまく米ヌカの量を一つの畝(ウネ:野菜を植えるために土を帯状に盛り上げた場所のこと)に投入したとのこと。湯気はヌカが土の中で発酵して熱を持ったために立ち昇っていたのでした。

1枚の畑に畝は数十本出来ますので、どうみても「与えすぎ」です。

どのくらいの面積に対してどのくらいの量をまくかと言う説明がないとこうした誤解が生じると言えます。

ところで、一つの畝についても、その中で肥料は均一にまく必要があります。

先日、障がい者の方と農業の関わりについてご相談を受けた際、この点をこちらから質問してみました。

その時のお返事は、なにかマークをつけて、ここからここまででカップ1杯まくと言うようにすると分かりやすいのではとの事でした。

実は今までも空き缶をカップ代わりに使うような事はしてきました。

菜園教室や実習の時に、「1メートルでカップ1杯」と言うような説明をして、参加者の人にやっていただいていたわけです。

この説明の「1メートル」と言う部分をより分かりやすくする工夫が、「マーク」と言う事だと思います。

そこでマークを付けた田引き紐に沿って肥料をまいてもらう方法を検討してみました。

一般的に畑で使う道具の色は緑系統は避け、赤や黄色系統にすると良いと言われています。

その方が野菜や雑草に紛れず、目立つからです。

市販品の田引き紐もその点は考えられているようで、オレンジ色をしていました。

この田引き紐にマークを付ける場合、何色のマークが良いでしょうか?

オレンジ・赤系統の紐に対して目立つ色でつけた方が良いのですが、補色となる緑だと野菜に紛れてしまいます。

いろいろ考えてみて、銀色のものを使う事にしました。

畑に張ってみると写真のようによく目立ちます。

試しに、自分でマークからマークまでの間でカップ1杯と言うように肥料をまく作業をしてみると、「分かりやすい」感じはしました。

ただ、マークがずれやすいと言う事が分かりました。

当初、銀色の紐を田引き紐につけてみたのですが、紐をきつく縛ったつもりでも、作業をしているうちに銀紐の位置がずれてきてしまいました。

そこで、シルバーの粘着テープを使ってみることにしました。しかし、粘着テープは田引き紐にくっつきにくいのか、やはり、作業中に位置がずれてしまうことが度々起こりました。

このように、まだ、改良の余地はありそうですが、このような作業方法を工夫する事で障がい者の人にとっても、そうでない人にとっても、「分かりやすい肥料のまき方」が示せると言う見込みが出てきた事は一歩前進と言えるでしょう。

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