僕が野菜農家に弟子入りしたのは、2002年の事です。
その頃、酸性雨の問題に関連して、「森林土壌調査」と言うのをやっていたのですが、
農地について調べられないかと言われて、畑の土壌診断を始めるようになりました。
ある時、安全な野菜が手に入らないかと言うご相談を受けて、
「師匠」になってくれた野菜農家の人に相談したら、
「そんなもの、自分で育てて売ればいいじゃないか。
作り方なら、俺が教えてやる」
と言う返事されました。
ところが、「俺が教えてやる」と言った「師匠」は「教える」事ができないのでした。
野菜栽培の腕は一流で、
30メートルぐらいの長さの畝(野菜を植えるために土を盛り上げた場所)を、定規も使わず、
紐も張らず、
クワ一本で真っ直ぐに作り上げてしまう事が出来る人でした。
しかし、「説明する」と言うことが出来ず、
自分がやってみせた後、
「やってみろ」と言うだけでした。
そこで僕が「やってみる」と「違う」と怒鳴りだす事が度々でした。
「どこが違うんですか?」と聞くと、
「お前は、そうやって理屈を言うから嫌いだ。
俺は気分が悪い。
今日は帰る」
と言い出します。
「そんな事を言わないで教えて下さいよ」
と頼んでも、
「今日は帰る、
明日、また来い」
みたいな事を言って、
本当に畑からいなくなってしまうわけです。
こうした経験を経て、
僕が考えた事は、
スポーツでも音楽でも
プレイヤーとして優れている事と
「教え方がうまい」事は別物だけど、
農業も一緒じゃないかと言う事でした。
音楽教室とかスポーツ教室とか、
「プレープロ」の他に、「レッスンプロ」がいる。
だったら、僕は野菜栽培のレッスンプロになろう
そう思ったわけです。