今回は、僕が野菜農家の師匠に弟子入りした時の話をします。
農業は大変とかと言われていますが、僕はある意味、それは感じませんでした。
むしろ、野菜はひとりでに育つので、こんなに簡単なのかと思ったほどです。
難しいと思うようになったのは、経験を重ねてからで、奥が深いなぁと思うようになりました。
とりあえず、なんかの野菜が出来るか出来ないかで言えば、けっこう簡単です。
別にこちらが見張っていて、いちいち「スイッチ」を押さなくても、野菜は芽を出し、育っていきます。
「人が地に種を蒔き、
夜昼、寝起きしているうちに、種は芽を出して成長するが、どうしてそうなるのか、その人は知らない。
地はおのずから実を結ばせるのであり、初めに茎、次に穂、それから穂には豊かな実ができる。」
って、イエス・キリストが福音書の中で語っていますが、
本当にその通りで農産物は「おのずから」育ち、実るものなのです。
そんな僕が、手こずったのが、実は溝を掘るのでも土を盛り上げるのでも、あるいは支柱を立てるのでも、全然、思い通りに出来ないと言う事でした。
師匠が「お手本」を示して、やってみろと言われて、その通りにやろうとしても、
溝は曲がり、思った深さになりませんし、土も思った形に盛れませんでした。
支柱も思った高さにできません。
いや、それは弟子入り直後で「熟練」していないからじゃ?
その通りなんですが、では、「熟練」とは何かと言う事です。
つまり、長さ2メートルの支柱があって、高さ1メートル80センチになるようにしたかったら、20センチ土に埋まるようにすればいいわけですが、
では、どうしたら20センチ土に埋まるように、地面に支柱が挿せるかと言うと、これが意外と難しいのです。
溝の深さでも土の盛り方でも、「畑で見た感じ」で自分が思っている深さや高さと、実際の深さや高さは違うのです。
野菜の世話が大変と言うより、野菜を植えるために溝を掘ったり土を盛ったりする、
防寒や苗の安定のために支柱を立てて、ネットやシートを張る・・・
実はこういう個々の作業が、野菜が育つ環境を整える事になるわけで、
「ひとりでに」、「おのずから」育って実ってくれるような状態を作るのが、溝掘り、土盛り、支柱立て、シート張りのような基本操作なわけです。
こういう基本操作に「慣れていく」ために反復練習の機会を持つなら、何も年間を通じて、野菜の世話をするために毎週通わなくてもよい、
半農予備校・菜園起業大学の野菜栽培基礎講習で行っている「自動車教習方式」はこうした考えのもとに生まれてきました。