菜園起業の魅力の第一は、食べ物を育てているので、文字通り「食いっぱぐれ」がないことでしょう。
農家は、自分で育てた野菜を食べる「自給」、売る「単純商品生産(単純商品流通)」の他に、事務所やお店、工場に働きにいく「賃労働」もしています。
農家には、複数の収入源があり、その収入にも、現金所得だけでなく、現物所得があるわけです。このように、複線型の人生経営をしていて「最後には食べ物がある」と言えるのが、農家的な強さです。
都会人は、賃労働しかしていないので、雇用を失うと生活に行き詰まってしまいます。現物所得が得られる暮らしなら、雇用をなくしてもすぐに行き詰まると言うことはありません。
最近は、田舎の空き家や空き地をただ同然の値段で借り、野菜を育てる半農生活者の方も出てきました。食べ物を育てる力を身につければ、そういう暮らし方も可能になります。
現金が得られると言うのも、菜園起業の魅力の一つです。その分だけ、よそに働きにいく必要がなくなるからです。
そもそも、資本主義社会における賃労働は、マルクスが指摘するように「労働において他人に従属する」と言う性格を持っています。
現代社会では、「心」や「人格」を売るような働き方を求められ、しかも、見返りが少ないこともしばしばあるでしょう。自然や人とふれあい、生命の息吹を感じる半農の活動で多少なりともお金が得られれば、心や体を病むような働き方の頻度を減らす事も可能になると言えるでしょう。
複線的な農家の人生経営
労働は、自然に働きかけて生産物を得る事を指します。
農家は、労働の成果として得られた生産物を食べる「自給」。
他人の労働の成果と交換する「物々交換」、
生産物を販売して現金を得る「単純商品流通」
など、複数の経営手段を持っています。
農家の経営目的は、「利潤」ではなく、「所得」、
つまり、生活のための収入の確保です。
「所得」には、現金所得と現物所得があります。
「労働力」を売る賃労働
自然に働きかけて生産を行うためには、土地や機械などの生産手段が必要になります。
生産手段を持たない人は、「労働力」を販売して、現金を獲得し、その現金で衣食住などの消費財を購入することで生存を確保することになります。